日本のLCCはどれくらい定着したのか?

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最初は安すぎて敬遠されていたLCCだが…完全に浸透

LCCが登場したばかりのころは、多くの人があまりの安さに不安を覚えました。航空の専門家の間でも懐疑的な意見があり、LCCはブームになったとしてもそれは一時のもので、すぐに廃れてしまうだろうと思われていたのです。2002年ごろのAAPA(アジア太平洋航空協会)のトップもアジア太平洋地域ではLCCは成長しないだろうとコメントをしています。

 

日本国内では2007年にジェットスターが海外LCCとして初就航しました。2015年4月には成田国際空港に第三旅客ターミナルが開業しこれはLCC専用ターミナルです。初年度には500万人が利用する見込みとなっています。日本の利用者は高い航空品質を求めるからLCCは受け入れられないのではないか?という意見モデル中、ピーチエアビジョンは2014年3月期決算では10億4600万円の黒字を出しています。これはLCCが完全に浸透した証拠とも言えるでしょう。

 

世界的な規模で見ても、LCCの座席シェアは2010年には23.4%となっており、かなり大きな伸びが出ていることが数値にも出ています。23.4%は1/4を占める数字です。つまり1年間に飛行機に乗る人の4人に1人はLCCを利用している計算になります。LCCは短距離路線がほとんどですから、長距離移動の際には大手航空会社を利用しなくてはいけません。簡単に計算をしてみると、短距離路線では3人に1人以上がLCCを利用していることになります。

 

LCCはどんな人が利用しているの?

LCCは現在でこそ、大手航空会社から乗り換えるように需要が増えてますが、もともとのターゲットは鉄道やバス、フェリーなど移動手段にお金をかけたくない層の人たちを格安の運賃を実現することで飛行機輸送を可能にしたものです。つまり、既存の飛行機旅行客を奪い取る目的ではなく、他の交通手段の利用客に飛行機という選択肢を提示する「新たな需要の創出」がLCCだったのです。

 

たとえば、EUでは国境を越えて就業している人たちがいます。移民の移動や熱狂的なサッカーフリークの応援移動。また学生を中心に手ぶらで友人のパーティーに参加するなど鉄道やバスを使った移動がとても多いという背景がありました。そこで登場し、需要を掘り起こしたのがLCCです。早く、格安で、気軽に乗れる飛行機は交通事情を一変させました。

 

現在では「格安で行けるから、今までなかなかいけなかった場所にもちょっと行ってみようか」という利用客が徐々に増えつつあります。ちょっとエスニック料理を食べるために海外へ。日帰り温泉に行くのに、飛行機に乗ろう。週末を利用して気軽に海外旅行へ。そんな使い方が増えてきています。

 

そして世界的な不況が訪れたことにより、ビジネスでの利用も増えてきています。このためビジネス需要を満たすために、LCCでありながらビジネスクラスに該当するアッパークラスを儲けるなど、LCCにも新たな変化が訪れているのです。

 

燃料高騰でLCC人気が高まった?

2008年に原油先物市場で原油が一時1バレル=147.27ドルと史上最高の高値を更新しました。飛行機を飛ばすためには燃料がどうしても必要です。原油が値上がりすれば、航空会社には大ダメージとなります。

 

多くの航空会社が大ダメージを受け、大幅な減益となったなか、LCCのサウスウェスト航空だけは燃油高騰の中でも大きな利益を上げました。これには他社に先んじて燃油ヘッジを開始していたからです。

 

燃油ヘッジとは先物取引の一種です。将来的に燃油が値上がりすると予測した場合、現在の安い価格で将来の燃料を購入するよう約束する契約です。変らぬ値段で燃油を仕入れられたサウスウエスト航空は運賃を安く販売できますから、一気に利用客が増えました。そしてサウスウェスト航空はこの燃油ヘッジで4000億ドル以上の利益を出したと言われています。しかし、2008年後半には原油価格が急落したことでサウスウェスト航空は今度は一転、大幅なヘッジ損を抱えてしまいました。

 

燃油の高騰でLCCの人気が高まった、知名度が高くなったと考えるのは間違いで燃油が値上がりすればするほど、LCCと大手航空会社の競争ではLCCが不利になります。なぜなら、営業費用の中で燃油が占める比率はLCCのほうが圧倒的に高いからです。

 

燃料代は航空会社の外部の力で決定されます。このため、燃料代を大きく節約することはできないため、その他のサービスを簡素化することでコスト削減をしています。燃油が上がれば経費が大きくなりますから、利益が減ってしまうのです。