あらゆることに追加料金を設定することで基本料金が安くなる
運賃が安いことで多くの客が集まるLCCですが、これだけでは利益率が低くなるということで、追加料金を儲けることで利益の回収率を高めようとする企業も多いです。追加料金として徴収されるのが、機内販売や預入手荷物手数料、予約変更量などです。枕や毛布を借りる場合にも追加料金が発生する航空会社がほとんどです。特にアレジアントやラインエアなど欧米系のLCC航空会社は付帯収入比率も多い傾向で、アジア系航空会社も追従する形でシェアを拡大しつつあります。
勿論この追加料金制度はLCCのメリットとして捉えることも可能です。飛行機乗ったらすぐに寝るから、機内食も映画も必要ない。もともと読書やゲームなどをして過ごすから映画は見ない。アレルギーや好き嫌いが多くて食べられないものが多い。食べたいものは自分で勝手に用意する。と言った人にとっては、余計なサービスがない分、安く済むLCCのメリットはとても大きいです。
近年、需要が低迷気味の大手航空会社でもこのLCCの経営手法を取り入れるところが増えてきています。アラカルト運賃やアンバンドルド運賃と呼ばれるもので預入手荷物の課金を厳しくするなどで運賃の減収を補っているのです。実際、2007年には1%以下だった付帯収入が2009年には4%以上に増加したというデータが出ています。サービスにお金がかかるというのは、どの航空会社でも当たり前になりつつあるのかもしれません。
有料トイレ、肥満税って一体何!?
アイルランドのライアンエアは欧州域内のLCCで、最も勢いのあるLCCとして知られています。この会社のCEO、マイケル・オレアリーは奇抜なアイディアを次々に打ち出すことで知られています。
機内のトイレ有料化
2009年2月に発表されたのが「機内のトイレ有料化」です。トイレのドアにクレジットカードの読み取り機や硬貨投入機を設置しトイレを利用するには1ポンド(130円~150円)を支払わなくてはいけないというものです。このニュースには多くの関係者も驚きつつも、ありえない話ではないと信じました。しかし、同社の広報担当が後日あの発表はCEOの冗談だったと釈明しました。かくしてトイレの有料化は幻となりました。
肥満税
2009年には肥満体型の乗客から、超加重料金として追加料金を徴収することを検討しました。こちらもトイレの有料化と同じく実行はされていませんが肥満の多い欧米の航空会社では太った乗客には2席分の料金を適用する制度が実際に存在しています。
立ち乗りサービス
立ち乗りすることによって座席スペースを大幅に削減し、料金を下げるプランです。こちらも実際には実現されていませんが、中国の春秋航空は具体的に検討しておりいずれどこかの会社で実現されるかもしれません。
この他にもマイケル・オレアリーはトイレットペーパー税、吐しゃ袋の有料化、副操縦士を廃止し、パイロットの1名化、機内のトイレを3箇所から1箇所へ減らしその分座席を6名分増やす……など様々なアイディアが提案され続けています。
今のところ、そこまで徹底したコスト削減は行われていないようですが、なんと社内にコスト削減のアイディアを募集したところ「オレアリー氏のかわりにCAをCEOに据えること」というアイディアまで登場しこの発想には本人も深く納得されたそうです。
LCCの経営者の辣腕が凄い
実はLCCの経営者はカリスマと呼ばれる辣腕経営者が多いです。たとえばサウスウェスト航空の創立者の一人であるハーブ・ケレハー。もともとは弁護士だったの彼がLCCのビジネスモデルを開発したのです。現在でも彼の単一機種編成、サブ空港使用、オンライン直販、サービスの簡素化という経営モデルは世界的なLCCの雛形となっています。彼のモットーは「社員第一主義」であることも知られています。今まで顧客第一主義であった航空会社の中で、社員がもっとも重要であると名言したことで社員のモチベーションを大幅にアップした逸話も有名です。
ジェットブルーの創立者のデビット・ニールマンは簡易予約システムを独自に開発しました。これによって航空チケットの予約にかかる人件費が大幅に削減され現在でも多くのLCC予約システムとして世界的に活躍しています。
エアアジアのトニー・フェルナンデスは2002年に赤字の航空会社をたったの1リンギット(約27円)で買収し10年足らずであっというまにアジア最大のLCC会社へと急成長させました。
この他にも、ラインエアのマイケル・オレアリーは毒舌の持ち主と知られています。空港税を導入する政治家や環境保護団体、高い使用料を請求する空港を「敵」として激しく口撃する反面、自らコスプレをして新聞広告に登場するなど奇抜な一面を持っています。
またイージージェットのステリオス・ハッジインナオウは格安ホテルや
レンタカー、インターネットカフェなどを同時に経営していることでも知られており近年ではパッケージツアーなどの販売にも挑んでいます。
彼らに共通するのは、徹底的なコスト管理です。日常の意思決定だけではなく、会社の細かな問題にまで精通し顧客や社員とのコミュニケーションに努めています。トップ自らコストカットに取り組む姿勢がLCC航空会社の経営姿勢にも大きく現れているのです。