LCCの台頭が機内食の質を押し上げた
空の旅の楽しみといえば機内食。
中距離~長距離を就航する飛行機に乗るなら、十分な料理が提供されるので空の旅で空腹にさいなまれるということはまずありませんでした。
ところがリーマンショックが起こった2008年以降では機内食の質が明らかに低下していますし、量も減っています。
採算悪化を食い止めるためにコストダウンを図り、利益率の低いエコノミークラスの機内食に手をつけたのです。
特にやり方が著しかったのが欧米の航空会社です。
以前なら機内食を提供していたような路線でも小さなスナックをよこしただけで、機内食が出ないというケースが相次ぎました。
ただしここ数年は少しずつ機内食の質や量が戻ってきているようです。
かつてほどのレベルに戻ったとは言えませんが小さなスナックのみだった路線でもサンドイッチくらいは出るようになったからです。
というのも、LCCの台頭が原因にあります。
とにかく飛行機代が安く済むLCCではコスト削減のために機内食の提供を一切しません。
もちろん機内食を希望すれば食べることができますが、あくまで希望者のみで有料でのサービス提供になります。
お金を払ってでも欲しいと思う人しか機内食を食べません。
しかしレガシーキャリアが機内食をケチって提供しないのであればLCCと変わらないばかりか料金の高いのではLCCに勝てません。
また機内食にオリジナリティを持たせることでLCCとの差別化をはかっている大手航空会社も増えています。
たとえばJALではモスバーガーや吉野家といった人気店とのコラボレーション企画「AIRモスバーガー」や「AIR吉野家」という機内食です。
普段当たり前に食べているものでも、機内で食べることができれば新鮮ですよね。
またKLMオランダ空港やエールフランスなど別途料金を支払うことでちょっと豪華な機内食を提供する航空会社もあります。
事前に予約をしておくと有料でワンランク上の機内食を選べるのです。
欧米のビジネスクラスで和食導入が続々
ビジネスクラスの機内食は昔からエコノミーとは雲泥の差がありました。
エコノミーがワントレーで提供されるのに対して、ビジネスではコース料理が提供されてきたほどです。
前菜、主菜、果物、デザートといった具合に、テンポよく料理が提供されます。
そんなビジネスの充実した機内食は近年さらにプレミアム感の強いものとなってきました。
有名シェフの監修などを駆使して、味にお墨付きを付け加える航空会社も増えています。
また、自国の伝統料理を提供するなどして、ビジネスの顧客定着に躍起になっているのです。
そして最近になって注目を集めだしたのが和食です。
日本に路線を持つ海外の航空会社は多数ありますが、昔は和食を提供することは殆どありませんでした。
そんな海外航空会社が日本路線において充実した和食を提供するようになったのです。
和食と言えばJAL、ANAの日本の航空会社の専売特許のようになっていたものが、欧米だけでなくアジア、中東などの航空会社も和食メニューに取り組んでいます。
驚きなのはフランス系のエールフランスは、自国のフランス料理に絶対的な自信を持つものの、事前のオーダーがあれば和食を用意可能となっています。
和食が提供される背景にあるのは和食が世界的にブームになっていることや、和食という文化が世界遺産に登録されたことも原因となっています。
そして、日本人客をしっかりと確保することも和食推進の一因と言えるでしょう。
ビジネスクラスの充実は地上でも行われている
航空会社によるビジネスクラスの拡充競争は機内だけに止まらず、地上においてもその競争は繰り広げられています。
地上における拡充となれば、それはラウンジの充実となります。
ラウンジとは航空会社が空港内に持っている設備の一つで、出発するまでの時間を有意義に過ごすことができる空間となっています。
それぞれの航空会社が持っていて、大空港になればほぼ設備が整っていると言っていいでしょう。
空港ラウンジでの飲食は基本的に無料となっています。
過去のラウンジではお菓子やジュース、おにぎりなどの経費があまりかからないものを無料提供してきたわけですが、近年では温かい食べ物、飲み物、ラーメン、うどんなど様々なメニューを無料提供しています。
それだけでなくシャワーを完備しているラウンジも登場してきており、飛行機に乗る前にシャワーでスッキリ汗を流してから搭乗できるので、特にビジネスマンは重宝しているようです。
他にはパーソナルスペースとしてのパソコン利用空間の充実や、仮眠室などでの休憩もできる航空会社も出てきています。
これらのラウンジはファーストクラス、ビジネスクラス向けのサービスとなっていて、航空会社によってはファーストクラス専用のラウンジを設けるなどして、更なるサービスの向上を目指して旅客の獲得にまい進しています。
これだけの設備投資をするだけの価値がファーストクラスやビジネスクラスには、あるという事になります。