飛行機は、空を自由自在に飛んでいるように見えますが、実際には気象条件によって大きく影響を受けます。
特に、翼の働きに関わる「失速」や、前線・積乱雲のような荒れた空域には細心の注意が必要です。
今回は、飛行機が失速する仕組みや悪天候時の操縦、積乱雲を避けて飛ぶ理由について解説します。
■「失速する」とは、どんな状態?
飛行機の「失速」という言葉は、単純にエンジンが止まったり
速度が急激に落ちたりすることを意味するわけではありません。
翼が十分な揚力を生み出せなくなった状態を指します。
飛行中の翼には空気が沿って流れ、その空気の流れを変化させることで揚力が生まれています。
しかし、機首を上げすぎるなどして翼の「迎え角」が大きくなりすぎると
空気が翼の表面に沿って流れられなくなります。
その結果、揚力が大きく低下し、失速状態に陥ります。
失速すると機体を思うように操縦できなくなり、高度を失っていきます。
ただし、適切な回復操作を行えば、通常は飛行状態を立て直すことができます。
特に危険なのが低高度での失速です。
高度に余裕がないため、回復操作を行う時間が限られます。
離陸直後や着陸直前は、特に慎重な操縦が求められます。
失速から回復する際には、機首を下げて迎え角を小さくするとともに
エンジン出力を増やして速度を回復させます。
こうして翼に再び十分な気流を作り、揚力を取り戻していきます。
■前線付近を飛ぶのが難しいのはなぜ?
暖かい空気と冷たい空気がぶつかる前線付近では、さまざまな気象現象が発生します。
大きな雲が発達して視界を妨げるだけでなく、乱気流や急激な風向きの変化が起こりやすくなるため
パイロットにとって難しい空域となります。
特に活発な前線では、上昇気流や下降気流が発生し、機体が大きく揺さぶられることがあります。
また、突然風向きが変化すれば、飛行や着陸の条件も大きく変わります。
雨天時の着陸にも注意が必要です。
滑走路が濡れているとタイヤと路面の摩擦が小さくなり、晴天時より機体が減速しにくくなります。
そのため、パイロットは気象条件や滑走路の状態を考慮しながら、進入速度やブレーキなどを慎重に調整します。
■なぜ旅客機は積乱雲の中を飛ばないの?
夏の空などで見られる巨大な入道雲は、航空機にとって非常に危険な存在です。
正式には「積乱雲」と呼ばれ、旅客機はできるだけその中を通過しないように飛行します。
積乱雲は、地表付近で温められた空気が強い上昇気流によって上空へ運ばれ
水蒸気が冷やされて発達することで生まれます。
雲の内部では強い上昇気流と下降気流が発生しているため
航空機が入り込むと激しい揺れにさらされる可能性があります。
さらに、積乱雲の中では大粒の雨や氷、ひょうなどが発生することがあります。
こうした水滴や氷が機体やエンジンに影響を与えるほか、雷が発生することもあります。
そのため、積乱雲が発達している空域では、雲と雲の間を通るなどして安全なルートを選びます。
遠回りになったとしても、危険な雲を避けて飛行することが、旅客機の安全運航につながっているのです。










