空港は毎日多くの方が行きかう場所ですから、
グランドスタッフが関与するエピソードも多岐にわたります。
その中には、感動エピソードやリアルなやり取りがいくつも存在しています。
それらのエピソードのいくつかを紹介したいと思います。
第1弾は「飛行機に乗りたくても、乗れない学生」のエピソードです。
それでは詳細を見てみましょう。
■何となくたたずんでいる中学生に話しかける
空港には様々な人がいるので、ロビーで1人のお客様を記憶することは至難の業ですし、
その中から困りごとのある人に声をかけるのはごく少数になります。
しかし学校がある時間帯に、中学生と思わしき子供がロビーで1時間以上も
たたずんでいれば不自然に感じるのは間違いありません。
何かあったのではないか?困っているのではないか?ということで、
声かけ対象となったわけです。
■お金を落として飛行機に乗れない
話を聞いてみると、
「沖縄にいるおばあちゃんの具合が悪くて、両親に飛行機に乗って後から来るように」
とスカイメイトで乗れるだけの運賃を手渡されたものの、紛失してしまい
途方に暮れているということでした。
詳しい事情を聴き、インターネットで住所や学校を調べたところ、
学校にはその子が話している内容と合致する形で連絡が言っていることが判明しました。
とはいえ、運賃を取らないままに飛行機に乗せるということは、他のお客さんとの
公平性の観点からも難しいという判断になってしまったのです。
■身銭を切って運賃を負担
そんな時、グランドスタッフの先輩は私が運賃を一時的に負担し、
後で羽田に戻ってきた際に返してもらうという約束の元で身銭を切る形で
飛行機を予約し、中学生は無事に沖縄行きの飛行機に乗ることができたのです。
これはかなり危険なかけともいえる行為ではあるものの、
その決断は素晴らしいと言わざるを得ません。
身銭を切るということは、戻ってこないことを覚悟しなければなりませんし
本当に中学生の言っていることが正しいかどうか親御さんには連絡がついていないので、
下手をすれば家出の手助けをしてしまうリスクもあるからです。
■羽田に戻ってきた際に返金された
後日、その中学生と親御さんが羽田に戻ってきた際、しっかりと運賃が返金されました。
また、機転を利かせてくれたということで、親御さんからは感謝されたのです。
最後の時を家族そろって過ごすことができたということで、その先輩の取った行動は
正しかったことが証明されたわけです。
■何が正しいかはケースバイケース
今回の事例は中学生が途方に暮れているという状況に対して、
グランドスタッフが身銭を切って運賃を負担するというケースでした。
結果的に正しい行為であると証明されたわけですが、すべてのケースにおいて
その行動が正しいかどうかは後になってみないと分かりません。
だからこそ、グランドスタッフはその場その場で最善手を選択しなければなりません。
お客様の立場を冷静に判断するスキルが必要とされているのです。