飛行機には、長い歴史の中で受け継がれてきた独特のルールや仕組みがあります。
なぜ乗客は左側から乗り降りするのか、後方の座席は本当に安全なのか。
そして、なぜ旅客機にはパラシュートが用意されていないのでしょうか。
■飛行機には、なぜ左側から乗り降りする?
旅客機を見ると、左右どちらにもドアがあることに気づきます。
しかし、乗客が利用するのは基本的に機体左側のドアです。
右側にもドアがありますが
こちらは機内食や荷物などを搬入するための「サービスドア」として使われます。
なぜ乗客用のドアが左側になったのか。
その背景には、船の歴史が関係しています。
かつて大型船では、右舷側に舵を操作するための大きな舵板が取り付けられていました。
そのため、右側を岸に寄せるのが難しく、乗降は左舷側から行うのが一般的でした。
こうした船の習慣が航空機にも受け継がれ、現在の旅客機でも左側を乗客用
右側を業務用とする配置が基本になっています。
空を飛ぶ乗り物なのに、乗降のルールには船の名残が残っているのです。
■本当に後部座席のほうが助かりやすい?
「飛行機事故では、後方の座席に座ったほうが生存率が高い」という
話を耳にすることがあります。
その背景としてよく挙げられるのが、1985年に起きた日本航空123便事故です。
この事故では520人が亡くなりましたが、後部座席にいた乗客4人が生存しました。
この事実から、後方の席が安全というイメージが広まりました。
しかし、事故の状況は一つひとつ異なります。
機首から衝突する事故なら後方が比較的強い場合がありますが
火災や爆発、機体の破壊などが発生すれば
座席位置だけで結果を説明することはできません。
そのため、「この座席なら安全」と一律に決めることはできません。
航空機事故では、衝突の方向や速度、機体の損傷
火災の有無、避難経路など、多くの条件が生存に影響します。
■なぜ旅客機にはパラシュートがない?
「非常時に備えて、乗客全員分のパラシュートを積んでおけばいいのでは?」と思うかもしれません。
しかし、旅客機でパラシュート脱出を行うのは現実的ではありません。
まず、旅客機は高度の高い空を飛ぶため、機内は地上より高い圧力に保たれています。
飛行中に乗客用ドアを開けて、そこから次々に飛び出すという方法は想定されていません。
さらに、旅客機は高速で飛行しています。
その状態で機外へ出れば、猛烈な風圧を受けることになります。
また、パラシュート降下に適した速度まで機体を減速すると
今度は航空機そのものを安全に飛ばすことが難しくなります。
旅客機では、パラシュートによる脱出よりも、機体そのものの安全性を高め
緊急時には機体を着陸させて乗客を避難させるという考え方が基本なのです。
■パラシュートは飛行機より先に発明されていた?
実は、パラシュートの歴史は飛行機よりはるかに古いものです。
1783年、フランスの発明家ルイ=セバスチャン・ルノルマンが
現在のパラシュートにつながる装置を考案しました。
「パラシュート」という言葉も彼が作ったとされています。
「para」は「防ぐ・対抗する」などの意味を持つ語
「chute」はフランス語で「落下」を意味します。
では、飛行機もない時代に、なぜパラシュートが必要だったのでしょうか。
当時すでに、人類は熱気球によって空へ上がっていました。
空を飛べるようになった一方で、「もし気球にトラブルが起きたら
どうやって地上へ戻るのか」という問題が生まれます。
そこでルノルマンは、熱気球から安全に降下するための装置としてパラシュートを考案し
実際に高所からの降下実験にも成功しました。
飛行機より先にパラシュートが生まれたのは、空を飛ぶ技術が登場した順番と
安全に地上へ戻る技術の発展が必ずしも同じではなかったからなのです。










