旅客機には離陸、着陸時に機体を支えるために、タイヤが付いています。
移動時もタイヤで移動しますし、着陸時には衝撃を吸収する役割があります。
そんな旅客機のタイヤですが、どんな凄いタイヤを使っているのか
気になる方もいるでしょう。
そこで旅客機に使われているタイヤについて見てみましょう。
■タイヤの構造は自動車と同じ
一般的なタイヤは、ナイロンなどの合成繊維を何層にもわたって重ね、
ゴムでまとめた構造になっていて、いわゆるチューブレスを使用しています。
そして以前は強度の高いバイアスタイヤの使用がメインでしたが、
現在は摩擦係数の小さく軽量タイプのラジアルタイヤが多く使われていおり、
そういう点において自動車のタイヤと旅客機のタイヤは、構造が同じと言えるのです。
■構造は自動車と同じでも強度は桁違い
旅客機のタイヤ構造が自動車と同じといっても、やはり安全性を考慮すれば
その強度は桁違いに高くなります。
まず旅客機は着陸時にタイヤの表面温度が400度以上にまで上昇するため、
タイヤの内部に不燃ガスである窒素を大量に注入しています。
そして素材そのものも熱の発生量が少ないとされている、
天然ゴムを主原料として旅客機のタイヤは製造されています。
■タイヤのトレッドは全く異なる
タイヤにはトレッドと呼ばれる溝があります。
自動車の場合、このトレッドは非常に複雑な幾何学模様になっていて、
タイヤメーカーで全く違うものです。
しかし旅客機のトレッドはタイヤの円周に沿って、何本かの直線的な
トレッドが付けられたシンプルなものとなっている。
複雑にしたほうがグリップ力が高まるように思うかもしれませんが、
シンプルにしている理由は2つあります。
1つ目は、飛行機はコーナリングすることがないため、複雑なトレッドは不要。
2つ目は、雨天時にタイヤと路面の間の水を排出するのに時間がかかると、
それだけでタイヤと滑走路面の摩擦が激減し、進行方向を制御できなくなり
スリップしてしまうからです。
トレッドがシンプルで本数も少ないのは、雨天を考慮しているのが最大の理由です。
■自動車と同じで重視すべきは安心、安全
旅客機も自動車もタイヤの基本的構造が同じなのは驚きですね。
その上で、素材が違ったり強度が異なる、細かな部分の細工が違うというのは、
乗り物としての性質が異なるためと言えるでしょう。
性質の異なる乗り物だからこそ、それぞれに適した安心、安全を実現するために
様々な工夫がなされていることが分かります。
想像もできないような圧力に耐える旅客機のタイヤは、それがなければ
飛行機として成り立たない重要な部品であると言えます。
もしタイヤが無ければ、飛行機は常に胴体着陸をしなければならず、
飛行機に乗るためには死を覚悟するほどのことになっていたことでしょう。
まさに人類の英知が結集されていると言っても過言ではありません。