飛行機の運航と聞くと「出発」に意識が向きがちですが、
実は「到着」業務にも多くの人が関わり、緊張感あふれる瞬間が存在します。
今回は、空港で実際に起きたアライバル業務の一幕をご紹介します。
■到着便を迎えるための準備と段取り
空港では、旅立つ飛行機があれば、必ずどこかから飛んできた飛行機も降り立っています。
到着便の運営は、スムーズな出発業務と同じくらい
あるいはそれ以上に神経を使う場面があります。
飛行機が着陸し、駐機スポットに到着すると、客室のドアが開きます。
その瞬間、グランドスタッフが必ず出迎えに立ち会い、機内の責任者である
チーフパーサーとまずは情報を共有します。
機内でのトラブル、体調不良の乗客、忘れ物など、あらゆる情報がここで引き継がれます。
その後、安全が確認された上で、乗客の降機が始まります。
誰がどの便を担当するかは、毎朝配られるシフト表に従って決まります。
担当するフライトの到着予定時刻は、専用端末やモニターで
常に最新情報が確認できるため、少し早めにゲートでの待機が基本です。
■予想外の事態が生んだ、全力疾走の記憶
私が空港で勤務していたある日、ちょっとした油断が大きな焦りを生む事態に発展しました。
腕時計が止まっていたことに気づかず、「まだ15分あるだろう」と思い
休憩スペースで一息ついていたのです。
ところが、ふとモニターを見上げた瞬間、担当便がすでに
「アプローチ中(着陸態勢)」の表示に変わっていました。
そこからゲートまでは徒歩で10分以上。
もしフライトが早めに到着してしまえば、誰も迎えにいないまま
ドアが開いてしまう可能性があるのです。
それが意味するのは、出発地のスタッフや機内クルーが連携して時間通りに運航してきた便が、
到着地のグランドスタッフの不在によって「遅延」と記録されるかもしれないということ。
実は、各フライトには記録が残されており、たとえば「5分遅延(地上係員対応遅れ)」
というように、原因が明記されてしまうのです。
■「間に合わなかったら…」がよぎる中で
とにかく急がなければと、私はヒールの靴を脱ぎ、手に持ってコンコースを全力疾走しました。
通路には誰もおらず、自分の足音だけが響きます。
息を切らしながらゲートにたどり着いたのは、到着の30秒前。
汗だくになりながら、どうにか飛行機のドアサイドに間に合いました。
ほんの数十秒の違いで、大きなトラブルを防ぐことができたのです。
■小さな教訓が生んだ大きな意識改革
この経験を通して、私は「時間管理の重要さ」を身をもって学びました。
特に空港業務の現場では、一人のちょっとした油断が
チーム全体に影響を及ぼす可能性があるのです。
それ以来、腕時計の電池切れには細心の注意を払うようになりました。
空港の到着ゲートでは、見えないところで様々なプロフェッショナルが連携し、
スムーズな運航を支えています。そんな日常の中にこそ、
数えきれないほどの小さなドラマが存在しているのです。