航空会社では、預け入れ荷物とは別に、機内に持ち込める手荷物のサイズや個数に制限を設けています。
一般的に、座席上の収納棚(オーバーヘッドビン)や前方の仕切り(バルクヘッド)に収まるサイズ
例えば小型のキャリーバッグやボストンバッグが対象です。
しかし、すべての乗客がその許容量ギリギリの荷物を機内に持ち込もうとすれば
当然ながら収納スペースが不足してしまいます。
特に混雑するビジネス路線では、出張帰りのビジネスパーソンが到着後すぐに空港を出られるよう
荷物を預けずに持ち込もうとする傾向が強く、収納棚がすぐに埋まってしまうのです。
■ゲートでの“さりげない”荷物調整
そうした状況に対応するため、キャビンアテンダントから地上スタッフに
「大きな荷物はできるだけ預けてもらえるよう声がけを」と依頼が入ることもあります。
そこで活躍するのが、搭乗ゲート付近で乗客の手荷物を見て回るグランドスタッフです。
スタッフは手に荷物タグを持ちながら、明らかに大きすぎるスーツケースや収納棚に入りきらなそうな
バッグを持っているお客様を見つけると、笑顔で近づいてやんわりと声をかけます。
「申し訳ない」というよりも、「身軽に快適にご搭乗いただくために、こちらでお預かりいたしますね」という
前向きな言い回しがコツ。強制ではなく、自然な流れで荷物を預けてもらえるような雰囲気づくりが求められます。
■預かり荷物の流れと裏方の奮闘
乗客からお預かりした手荷物には、その場で引き換え用のタグをつけ、グランドスタッフが一時的にゲートに集めます。
その後、荷物は搭載エリアに運ばれますが、実際の搬送作業には、空港の新人スタッフが関わることも多いです。
搭乗ブリッジ(ボーディングブリッジ)から機体へと続く通路の外側に出て、
手荷物を航空機の下にいるグランドハンドリングの担当者に引き渡す作業です。
初めのうちは「ひとつずつしか持って階段を降りられない!」と戸惑っていた新人スタッフも、
慣れてくるとベビーカーを両手に下げて平然と階段を下るように。
そんな“現場ならでは”のエピソードも、空港で働く楽しさと成長の証です。
■お客様への配慮と現場の工夫
このような機内持ち込みの調整は、単なるルールの遵守だけではなく、快適な搭乗体験の提供と、
機内の安全・効率を保つための重要な対応です。
いかに気持ちよく荷物を預けてもらえるか、限られた時間でどれだけ的確に声がけできるか。
そこには、グランドスタッフの高いコミュニケーション力と判断力が求められます。
目立つ仕事ではありませんが、乗客一人ひとりの快適さを陰で支えるこの業務には
空港ならではのチームワークと気配りが詰まっています。
■空港の舞台裏にあるドラマ
乗客にとっては何気ないひとコマかもしれませんが、ゲートでの荷物調整や搬送には、
多くのスタッフの連携と経験が生きています。
新人が少しずつ業務に慣れ、ベテランから学びながら成長していく姿も、
空港という現場ならではの“日常のドラマ”の一つと言えるでしょう。