国内外の交通の要となる大規模な空港、たとえば羽田空港のような場所では
日常的に芸能人や著名なスポーツ選手、さらには政界や経済界のVIPが利用します。
そうした空港で働いていると、たまたま有名人とすれ違う、というレベルを超え
1日に何人もの有名な人物を見かけることも珍しくありません。
■特別対応が求められるVIP対応
一般のお客様と異なり、著名人や要人にはプライバシーや安全への配慮が欠かせません。
そのため、地上での対応を行うグランドスタッフが個別に付き添い、空港内をスムーズに移動できるようサポートします。
ときにはテレビニュースで、空港に降り立ったオリンピック選手やハリウッドスターの後ろを歩く
スタッフの姿を目にすることもあるでしょう。それも、こうした特別対応の一環です。
ある航空会社で勤務していたスタッフは、
「何年も勤務する中で、多くの著名人を間近で見てきました。
表面上は冷静に業務をこなしていますが、心の中では好きな俳優に会えた日などは
ちょっとテンションが上がってしまうことも」と話します。
スタッフとしてのプロ意識があるため、声をかけたり騒いだりすることは一切ありませんが
嬉しさを感じるのは自然なことです。
■貴賓ルートと専用スペースの存在
特に国賓級のVIPともなると、空港内での移動は一般の搭乗客とはまったく異なるルートになります。
空港内には「貴賓室」と呼ばれる特別な施設が用意されており、そこでチェックインを済ませたあと、
専用の車両で出発口や搭乗口まで移動します。こうしたケースでは、どんな小さなミスも許されません。
すべてが円滑に進むよう、事前に綿密な準備がなされ、対応するスタッフも
最大限の注意と緊張感をもって業務にあたります。保安面はもちろん、
時間の正確さや導線の確保にも細心の配慮が求められます。
■メディアの前に出るという意外な側面
VIPの移動に同行する際には、時に報道陣の前を通ることもあり
自分自身がニュース映像に映り込んでしまうこともあります。
こうした場面では、こっそり身だしなみを整えてから案内に出るという
裏方ながら少しだけ“表舞台”を意識した対応も必要になるのです。
■有名人の「素顔」に触れることも
筆者自身がグランドスタッフとして勤務していた頃にも、数人の著名人と短く会話を交わす機会がありました。
メディアで見るイメージそのままの人もいれば、想像とは違った雰囲気を感じることもあり、それぞれに印象が残っています。
ベテランの同僚に「あの方ってどういう人なんですか?」と聞いてみると
「○○さんは控えめでスタッフにも丁寧な方だったよ」といった“評判”をこっそり教えてくれることもあります。
そうしたやり取りを通じて、スタッフ同士の間にもある種の“都市伝説”のような話が生まれていくのです。
■最前線だからこそ感じる「人となり」
空港という場所は、誰もが等しく利用する交通インフラである一方で、
極めてプライベートな瞬間にも立ち会うことができる特殊な職場です。
ごく短い時間の接点でも、人の態度や言葉遣いから、その人の本質が垣間見えることがあります。
グランドスタッフとして多くの人と接する中で、人を見る目も自然と養われていくものなのだと、改めて実感させられました。