グランドスタッフとして働いていると、一般的な日常では
なかなか接することのない方々にお会いする機会があります。
国の要人や著名人、そして時には特別な事情を抱えた方など
多様なお客様をお迎えするのも仕事の一部です。
華やかに見える空港の裏側では、緊張感と責任感
そして小さな感動が入り混じった場面が数多くあります。
■有名人との出会いは、心に残るひととき
ある日、首相のパスポートを確認したときには、手が震えるほど緊張しました。
失礼があってはならないという思いから、普段よりも慎重に手続きを進めたことを覚えています。
また、昔から憧れていた芸能人と業務中にほんの少し言葉を交わした際には
胸の鼓動が高鳴り、頭の中が真っ白になってしまいました。
たとえ直接お会いできなくても、自分がファンの有名人が空港を利用したときには
同僚が「とても気さくな人だったよ」「オーラがすごかった!」と話してくれ
そのたびに密かに嬉しい気持ちになったものです。
こうした特別なお客様に対しても、私たちはプロとして冷静に対応する必要があります。
たとえどれほど有名な方であっても、通常のお客様と同じように
丁寧で落ち着いた接客を心がけています。
■“プリズナー対応”という特別な業務
一方で、空港には一般の利用者とは異なる理由で搭乗される方もいます。
航空会社では、刑務所などに移送される方を「プリズナー」と呼ぶことがあります。
こうした方々は、他のお客様から手錠などが見えないように配慮し
目立たない経路やタイミングで搭乗されます。
警察官が私服で同行することが多く、他の乗客に気づかれないよう慎重に進めるのが基本です。
時には、ニュースで見た事件の関係者であることもあり、心中は穏やかではありません。
しかし、私たちはエアラインの顔として、あくまで平常心で対応することを徹底しています。
何より、周囲のお客様に不安を与えないよう
会話や動線に細心の注意を払うことが求められます。
■特別なお客様への情報共有と準備
グランドスタッフは、勤務開始時に「ブリーフィング」と呼ばれるミーティングを行います。
ここでその日の運航状況や注意事項を共有し
特別な対応が必要なお客様についても確認します。
たとえば、人気芸能人や著名な文化人が搭乗される場合
空港で人だかりができる可能性があるため、混乱を避けるための対策が必要になります。
こうした場合は、専任の担当スタッフを配置し、一般の動線とは
異なるルートでご案内することもあります。
担当になったスタッフは、心の中で高鳴る興奮を抑えながらも
プロとして冷静にサービスを提供します。
もちろん、サインや写真をお願いすることは厳禁です。
ただし、スポーツ選手などが試合や遠征に向かう場面では
業務を終えた最後の瞬間に「頑張ってください」とさりげなく声をかけることもあります。
その一言に「ありがとう」と笑顔で返してくれる選手がいると
スタッフの間で「あの人は本当に素敵な方だったね」と話題になることもあります。
たとえば、元ニューヨーク・ヤンキースの松井秀樹選手は、いつも穏やかで礼儀正しく
スタッフへの気配りが行き届いていたことで有名でした。
その姿勢は「神対応」として、職場内で長く語り継がれていました。
■空港は出会いの舞台でもある
グランドスタッフの仕事は、単なる接客にとどまりません。
そこには、さまざまな人との出会いがあり、一つひとつの対応にドラマがあります。
華やかさと緊張、そして責任の狭間で、日々の経験が自分自身を成長させてくれるのです。
空港という特別な場所には、世界中の人が行き交い
ほんの一瞬の出会いが心に残る思い出になることがあります。
そうした瞬間こそが、グランドスタッフという仕事の醍醐味なのかもしれません。







 
 



 
	        	        		 
	        	        		 
	        	        		 
	        	        		 
	        	        		 
	        	        		 
	        	        		 
	        	        		 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
