航空業界で働くスタッフは、公共交通機関としての厳格さと
サービス業としての柔軟な対応力の両方を求められます。
とくに日本では、航空会社に寄せられる期待が高く、日々多種多様な要望やクレームが寄せられます。
安全運航のために譲れない基準がある一方で、お客様に寄り添う姿勢も欠かせません。
今回は、その狭間で奮闘するグランドスタッフの現場のリアルを、体験談を交えて紹介します。
■公共交通機関でありながらサービス業でもある難しさ
航空会社は社会インフラとしての役割を担い、常に「安全最優先」で運航を行っています。
しかし同時に、多くのお客様を迎えるサービス業でもあります。
この二つの性格が並び立つからこそ、理想的な対応を取ることが簡単ではありません。
ときには、安全確保のために時間を要したり、運航スケジュールが大幅に乱れたりすることもあります。
そうした状況では、お客様の不満がスタッフに向けられることも少なくありません。
しかし、どれほど厳しい声をいただいても、安全を揺るがす判断だけは決して許されないのです。
■期待が高いからこそ寄せられるさまざまな要望
日本の航空利用者は品質の高いサービスに慣れているため、細やかな配慮を求める声も多く寄せられます。
利用者の気持ちは理解できるものの、すべてに応じることはできません。
もし無理に要求を満たしてしまえば、安全や他のお客様への公平性が損なわれる可能性さえあります。
そのため、どの要望が受け入れられ、どこから先は難しいのかを瞬時に判断することが
グランドスタッフの重要な役割となります。
■現場で実際に寄せられた代表的なクレーム
現場では、次のような要望や不満が寄せられることがあります。
・悪天候で出発が遅れて会議に間に合わなかった。
社にどう説明すればいいのか、補償してほしい
・変更不可の航空券だと言われたが、急用ができたのでなんとか日付を変えられないか
・空港に着いたらすでに残席がバラバラ。家族旅行なので、どうしてもみんなで並んで座りたい
・案内の声が冷たく感じた。サービス業としてもっと丁寧に対応してほしい
・締め切り時刻を少し過ぎただけなのに搭乗手続きができないのは納得できない。
特例を認めてほしい。
このような訴えは、お客様それぞれの事情があるからこそ生まれます。
気持ちは汲み取りつつも、航空会社として譲れない安全基準や運用ルールがあるため
どうしても応じられないケースも多いのです。
■誠意を持って伝えることが最良の方法
大切なのは、ただ規則を説明するのではなく「なぜそのような対応になるのか」を誠意を込めて伝えることです。
理由や背景を丁寧にお話しすると、最初は怒っていたお客様も
次第に理解を示してくださることがあります。
逆に、急かされたり萎縮したりして曖昧な説明をしてしまうと
誤解を招き、トラブルがさらに大きくなることもあります。
現場のベテランスタッフはよく「お客様の目をしっかり見て
落ち着いた態度で向き合うことが一番大切」と語ります。
気持ちを込めたコミュニケーションが信頼につながり、安全とサービスの両立を支えているのです。










