旅客機はおよそ高度1万メートル(約3万3,000フィート)の上空を飛行しています。
「およそ」というのは8,000~1万2,000メートル(3万~4万フィート)と幅があるからです。
幅があるのは他の飛行中の航空機と接近しすぎることがないように
管制機関が調整しており、各機が高度を変えて飛んでいるからです。
なぜ、旅客機の高度がおよそ1万メートル前後を飛ぶことが多いのでしょうか?
■空気の密度と燃費消費率に関係がある
高度が上がると空気の密度は低くなります。
高い山に登ると酸素濃度が低くなるのと同じように、高度が上がれば上がるほど空気の密度は低くなります。
空気の密度が低くなれば、空気の抵抗が少なくなるので、少ない燃料で効率よく航空機は飛行ができるようになります。
同じ燃料を使って、より遠くに行けるのです。
では、更に高度を上げて空気密度を低いところへ行けば燃費が良くなるのか?
と思うかもしれますが、今度は逆に高度1万メートルを超えてしまうと空気の密度が下がりすぎてしまい
エンジンを燃焼させるための酸素が得られなくなってしまい、エンジン効率が悪くなってしまいます。
空気の抵抗とエンジンを燃焼させるための酸素量のバランスがちょうどいいのが
高度1万メートル前後ということで、旅客機はその高度を飛行するのです。
■どうやって割り出した?
高度1万メートルが“ちょうどいい”のは揚抗比から導き出すことができます。
揚抗比は飛行機の重さを支える揚力と空気の抵抗である抗力との比率です。
飛行機は上昇するにつれて揚力が小さくなります。
揚力が小さくなると機首を少し上に上げることで飛行機の重さを支える揚力を調整します。
しかし機首を上げると空気抵抗も大きくなってしまうのです。
飛行機の姿勢が最も安定して、燃費が最も効率良い状態になると
揚抗比が最大になります。
そして割り出された最も良い高度が1万メートルだったのです。
■飛行時間が短い場合は条件が変わる
実は高度1万メートル上空が最もちょうどいい、というのは長距離のフライトの場合です。
逆に比較的近距離の空港から空港への移動の場合には、1万メートルよりも低い高度を飛行します。
これは航空機が上昇して、水平飛行可能な高度に達するまでに時間がかかることが原因です。
水平飛行可能な時間が長く確保できるから高度1万メートルがちょうどいいのであって
高度に達するまでには時間がかかりますし、達した途端に降下をしてしまえば
燃費消費率は著しく低下してしまい、意味がありません。
そこで飛行距離が短い場合には、1万メートルよりも低い高度を飛行するほうが
燃費効率よく移動することができるのです。