航空機の安全運航は、優れた技術を持つパイロットだけでなく
互いを支え合うチームワークによって成り立っています。
その基盤となるのが、副操縦士の育成と、日々積み重ねられる訓練です。
本記事では、訓練教官としての視点から、パイロット育成の現場と
チームで飛ぶことの意味についてご紹介します。
■副操縦士を育てるFOUG訓練
ジェイ・エアでは、自社養成ではなく
すでに必要なライセンスを取得した人材を対象に副操縦士訓練を行っています。
私は教官として、「FOUG(First Officer Upgrade)」と呼ばれる
副操縦士昇格訓練に携わっています。
訓練は約3か月の座学から始まり
その後、シミュレーター訓練や路線訓練を含む長期間の実践教育へ進みます。
ジェット機特有の感覚を身につける「ブリッジ訓練」を経て
本格的なフルフライトシミュレーター訓練へ移行します。
さらに実機を用いた離着陸訓練も行われ、あらゆる課程を修了し
航空局の審査に合格して初めて副操縦士として認められます。
■副操縦士という重要な役割
「副」という言葉から補佐役の印象を持たれがちですが
副操縦士は独立した責任を持つ重要な存在です。
運航マニュアルには、機長に万一のことがあった場合
副操縦士が指揮権を引き継ぐことが明記されています。
そのため、日頃から判断力や責任感を備え
いつでもチームを支えられる存在でなければなりません。
教官として、単に操縦技術を教えるだけでなく
「いざという時に指揮を執れる人材を育てる」という意識を持ちながら
訓練に向き合っています。
■忘れられない“初めて”の記憶
パイロットにとっても、「初めての経験」は特別な記憶として残ります。
中でも印象深いのが、訓練生時代の初めてのソロフライトです。
教官を乗せず、一人で小型機を操縦するこの経験は
多くのパイロットにとって大きな節目となります。
訓練後には、教官からシャツにサインをもらう習慣があり
私自身も「良い判断を心がけなさい」という言葉を受け取りました。
その教えは、機長として初めてお客様を乗せたフライトでも強く胸に刻まれていました。
責任の重さを感じながらも、安全運航を守り続ける決意を新たにした瞬間でした。
■進化する訓練とチームプレー
近年では、「MPL(Multi-crew Pilot License)」という
新しい訓練制度も導入されています。
これは、初期段階から機長と副操縦士の連携を前提に訓練を進める仕組みで
現代の航空運航に合わせた育成方法です。
従来は単独操縦技術の習得が中心でしたが
現在はチームとして最適な判断を導き出す能力がより重視されています。
出発前や飛行中には、気象や運航状況について何度もブリーフィングを行い
情報を共有しながら最善の判断を探っていきます。
同じ景色を見ていても、受け取る情報や視点は人それぞれ異なるため
対話による確認が欠かせません。
■「二人で一人以上の力を発揮する」ために
私が大切にしているのは、「機長と副操縦士が協力し
二人で一人以上の力を発揮する」という考え方です。
航空機や運航環境が進化し続ける中で、安全運航を実現するためには
高い技術だけでなく、互いを尊重し合う関係性が必要不可欠です。
これからも、パイロット同士が信頼し合い
力を最大限に発揮できる環境づくりに努めながら、空の安全を支えていきます。










