機窓から眺める日本の絶景と空の物語

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飛行機に乗る楽しみは、目的地へ向かうことだけではありません。
窓の外に広がる景色もまた、旅を彩る大切な魅力のひとつです。

パイロットとして空を飛んでいると、日本の山々や都市の夜景
そして地上ではなかなか見ることのできない自然現象に出会います。
その一方で、美しい景色の裏には、安全運航のために注意しなければならない
気象条件も存在しています。

今回は、機上から見える風景と、その背景にある空の世界をご紹介します。

■空に描かれた見えない道
航空機は自由に空を飛んでいるように見えますが
実際には「航空路」と呼ばれる空の道に沿って飛行しています。

現在はGPSや慣性航法装置を利用したRNAVという航法方式が主流となっており
地上の無線施設に頼ることなく正確な飛行が可能になりました。
航空路には地上の道路と同じように名前が付けられており
アルファベットと数字の組み合わせで管理されています。

例えば羽田空港を離陸し熊本へ向かう便では
離陸後まもなく横浜ベイブリッジ上空を通過し
その後は富士山や南アルプスを眺めながら西へ進みます。
名古屋や京都、大阪の街並みを眼下に見送り
瀬戸内海では瀬戸大橋やしまなみ海道
大小の島々が織りなす美しい風景を楽しむことができます。

しかし、こうした絶景はパイロットにとって注意すべき場所でもあります。
富士山のような大きな山の周辺では「山岳波」と呼ばれる
乱気流が発生することがあり、風下側では強い揺れが生じる場合があります。
そのため、山との位置関係や高度を確認しながら慎重に飛行しています。

■夜の空で出会う特別な景色
夜間飛行では、昼間とは異なる魅力があります。

なかでも印象的なのは、羽田空港を離陸した直後に広がる東京の夜景です。
無数の光が輝く街並みはまるで宝石を散りばめたようで
条件が良ければ東京スカイツリーや東京ディズニーリゾートも見つけることができます。

高度が上がるにつれ、視界には関東平野を覆う広大な灯りが広がります。
地形さえ浮かび上がらせるほどの光の海は、何度見ても圧倒される光景です。

海外路線でも忘れられない景色があります。
成田からダラスへ向かう途中、長い洋上飛行を終えてアメリカ大陸に近づくと
シアトルの夜景が見えることがあります。
暗い海の向こうに突然現れる街の灯りは、旅の始まりを感じさせる印象的な瞬間です。

そして私が特におすすめしたいのが夜明けの空です。
漆黒の空が群青色へと変わり、やがてオレンジ色の光が地平線を染めていく様子は
幻想的で、何度見ても飽きることがありません。

さらに冬の欧州路線では、運が良ければオーロラに出会えることもあります。
緑色を中心に、ときには赤や紫を交えながら揺れ動く光のカーテンは
まさに自然が生み出す芸術です。

■冬の富士山が見せる雄大な姿
冬になると、機窓から眺める富士山はひときわ美しくなります。

雪をまとった山頂、お鉢状の火口、宝永火口までくっきりと見えるその姿は
日本を代表する景観のひとつです。
機内からは気軽に眺められますが、山頂付近は氷点下30度にも達し
強風が吹き荒れる過酷な環境です。

その一方で、富士山は航空機にとって大きな障害物でもあります。
周辺では山岳波による気流の乱れが発生しやすいため
飛行には細心の注意が必要です。

以前、冬の澄み切った晴天の日に新千歳から福岡へ向かっていた際
秋田付近の上空から遠くに白い山影が見えました。
当初は何の山かわかりませんでしたが
近づくにつれて富士山であることが判明しました。
およそ500キロも離れた場所からその姿が確認できたことに
自然の雄大さを改めて感じたのを覚えています。

空の旅では、目的地だけでなく、その途中に広がる景色もまた大きな魅力です。
次に飛行機へ乗る機会があれば、ぜひ窓の外にも目を向けてみてください。
そこには地上では味わえない、特別な世界が広がっています。