飛行機にはエアコンが装備されていて、常に快適に過ごせる温度に機内を調整しています。
エアコンがある位置は胴体の中央や全部の下側です。
■家庭用エアコンとは違う仕組みのエアコンが搭載されている
家庭用として一般に販売されているエアコンはフロンガスという冷媒を屋内と屋外で循環させることで
熱の移動を行って部屋の中の温度を調節しています。
部屋の熱を冷媒が吸収して、室外に放出することでお部屋の中が涼しくなるのです。
一方旅客機に搭載されているエアコンシステムは、フロンガスを利用していません。
旅客機のエアコンは「エアサイクル方式」が採用されています。
膨らませた風船の口を緩ませると、空気が勢いよく出てきます。
この空気は通常の空気よりも冷たく感じられます。
熱い料理を冷ます時に、口をすぼめて「ふーふー」と冷たい空気を出すのも一緒です。
この現象のように圧力が高い状態の圧縮空気を急激に膨張させることで
圧力を下げて低温の空気を作っています。
エアサイクル方式を利用することで、フロンガスが漏れる心配もなく
フロンガスを積まなくてもよいことから機体を軽量化することができています。
■機内の気圧を生命維持に必要な環境に与圧する役割
エアコンシステムの最も重要な役割は、機内の温度調整ではありません。
それよりももっと大事なのが、気圧を調整する役割です。
飛行機が飛ぶ上空は気圧が低く、酸素量が少ないため
機内の気圧を調節しなければ乗客は酸欠状態になってしまいます。
飛行機が飛んでいる上空1万mの気圧は0.2で
人間はこの環境下ではおよそ1~2分で酸欠になり、気絶してしまいます。
これを防いでくれているのがエアコンシステムなのです。
エンジンから取り込まれた空気は圧縮機で圧縮され、高温高圧の状態にされます。
このときの温度はおよそ200度。
この高温の空気がエアコンの中にあるエアサイクルマシンで作られた冷たい空気と混ぜられ
機内は快適な温度に調整されます。
そしてこの空気が、ライザーダクトというパイプを通って飛行機の天井へ送られ
ディストリビューションダクトというパイプを通って客室へと送られます。
これにより機内の空気は人が呼吸できる酸素レベルを保ち、酸欠状態を防いでいます。
こんな重要なエアコンが、もし壊れてしまったらどうなるの?
と不安に思うかもしれません。
高度1万m、マイナス50度の上空を飛んでいる時にもしエアコンが壊れても心配する必要はありません。
急激に温度が下がることはありませんし、温度が下がったとしても5度には保たれる機能があるので
生存が危ぶまれる心配はないのです。