グランドスタッフとして働く中で身につく能力は、辞めたあとも日常生活や転職先で不思議なほど役に立ちます。
過酷な現場での判断、数えきれないほどの接客を通じて備わる力は
単なる業務スキルに留まりません。
今回は、航空会社の現場で培われる“特技のような能力”をご紹介します。
■瞬時の判断力と柔軟な対応力が鍛えられる
グランドスタッフとして働いて感じたのは、「一瞬の判断が安全につながる」という緊張感でした。
普通の企業ではまず経験しない“秒単位の決断”が求められ、それをお客様の前で迷わず示さなければなりません。
若い頃の私は、責任の重さに押しつぶされそうになりながらも、迷ったときは先輩に相談したり
マニュアルを確認したりしながら必死に乗り越えました。
むしろ曖昧なまま進めるほうが危険で、ダブルチェックや複数の確認体制が整っているからこそ
安心して判断できるようになっていきます。
転職後、一般企業に移って最初に気づいたのは「急がなくてもいい場面が意外と多い」ということでした。
通常のデスクワークでさえ、つい無意識に身を乗り出して作業してしまうほど
身体が“素早く動く”ことに慣れていたのです。
想定外の事態が起こっても落ち着いて対応できるのは、この経験のおかげだと思います。
■観察力と“人を読む力”が自然と身につく
何万人というお客様と接していると、わずかな表情や仕草から
相手の意図を読み取る感覚が研ぎ澄まされます。
少し会話しただけで“この方は急いでいるな”“困っているけれど言い出しにくいのだな”と
察することができるようになるのです。
もちろん例外もありますが、経験に基づく直感は驚くほど当たることが多く
お客様から「どうして気づいたの?」と驚かれることもしばしばです。
この観察力は、安全を守るうえでも欠かせません。
普段とは違う動きや不自然な様子にいち早く気づいてトラブルを未然に防いだ例は数多く
グランドスタッフが持つ“違和感を見抜くセンサー”は、航空会社を支える重要な力だと実感します。
■サービスの質に敏感になるという“職業病”も
これは特技というより“習性”に近いかもしれません。
グランドスタッフは、自分自身が丁寧な接客を求められる環境にいるため
他のサービスに対しても自然と目が肥えてしまいます。
同期で食事に行くと、テーブルの上をさっと整えたり、お店の負担にならないよう気を配ったりと
良いお客様になっていることに気づきます。
ただしその一方で、明らかに礼を欠く対応や、説明不足のまま放置されるようなサービスに遭遇すると
つい厳しい目で見てしまう面もあります。
自分では黙っているつもりでも、態度に出てしまい、友人に驚かれることもあるほどです。
■早食い&大食いになるのは“現場の宿命”
意外かもしれませんが、グランドスタッフの多くが“食べるのが早く、そしてよく食べる”傾向があります。
休憩時間は一見十分に見えても、移動や身だしなみの整え直しを含めると
実際に食事に充てられるのはせいぜい30分ほど。
さらにチームで動くため、トラブルが起きたときに「休憩だから行きません」とは言えず
10分で食事を終えることも珍しくありません。
その結果、「食べられるときに食べておこう」という習慣が身につき、退職後もその癖が抜けず
新しい職場で驚かれることさえあります。










