飛行機は車輪があり、エンジンも搭載しています。
そのため自走できるのですが、自動車と違うのはバックしないことです。
飛行機のエンジンはジェット噴射で後ろ向きについているため、
噴射しても前にしか進みません。
逆噴射する機能はありますが、バックするための機能ではないので
機体がどのように動くのか予想できず危険が伴うためできません。
しかし格納庫などに収められている飛行機を見ると、
どう見てもバックで入ったとしか考えられないケースもあります。
そういったケースにどのように対応しているのかを含め、詳細に見てみましょう。
■自分でバックできない飛行機は…
格納庫に飛行機を入れるとき、前向きで飛行機は格納されません。
後ろ向きで格納されています。
この時、飛行機は自分でバック走行できないので、トラクターのような
大きな車輪を持った特殊な車両で機体を牽引したり、押したりするのです。
以前紹介したトーイングカーが代表的な車両になりますが、
トーイングカーの場合は飛行機の機首の下に潜り込んで、
飛行機の前輪とトーイングカーの車体を連結します。
連結した状態でトーイングカーが前に進めば、そのまま飛行機を
バックさせることができるのです。
この方法は「プッシュバック」と呼ばれています。
■小回りの利く回転も可能
トーイングカーは小回りの利く車両なので、小刻みにハンドル操作することで
連結している飛行機もそれに合わせて展開さえます。
トーイングカーで注意しなければならないのは、トーイングカーでハンドルを
右に切ると飛行機の車体は左に旋回することです。
ハンドル操作と実際の方向が逆になるので、この点は慎重に判断しなければなりません。
■格納庫内で許される誤差は数センチ
飛行機をトーイングカーなどでバックさせて格納庫に入れる場合、
非常に慎重な動きが要求されます。
というのも、格納庫内はまざまな作業台や機械が配置されているため
それらに接触しないように格納しなければなりません。
そのため許容される格納位置の誤差は数センチと言われています。
たった数センチの誤差しか許されないというのは、針の穴に糸を通すようなもので
失敗は絶対に許されません。
そのため、格納庫内に残っている飛行機のタイヤ痕は常に一本という状態で、
トーイングカーのオペレーターが如何に熟練の技術を持っているかがわかります。
■まとめ
飛行機は自力でバックできないことが分かりました。
あれだけ大きいのだからバックしてもゆっくりなら大丈夫では?
と思っていましたが、実際には逆噴射するのは非常にリスクを伴っており、
しかも格納庫への収納は、数センチの誤差しか許されていないという
非常にシビアな環境であることがわかります。
もう少しゆとりを持った設計にすれば?と思うかもしれませんし、
飛行機の自走機能もエンジンに頼るのではなく、電気的にできないのか
という疑問を持つ人もいるかもしれません。
しかし現状はこの方法が一番安全で効率的であるとされているのです。