LCCは世界でどのくらいの数があるの?
LCCは世界にどのくらい存在しているのでしょうか?具体的な数字を見ていきましょう。
アジア……約30社
北米……10社強
欧州……約50社
2000年までに50社のLCCが誕生し、14社が倒産・撤退・消滅し、現在まで残っているのは36社です。2000年以降に誕生したLCCは128社でそのうち38社が倒産・撤退・消滅、2009年には90社まで減ってしまいました。全期間では178社が誕生し、52社が消えた形です。生存率はだいたい70%しかなく、LCCが人気だからといって決して生き残りが楽なわけではないのです。
特に2001年~2006年の期間は世界的な不況と重なったこともあり誕生したLCCの生存率は約50%となっており大変厳しい期間があったのも事実です。今後も従来のビジネスモデルからの変化が大きく生き残る会社と消えてしまう会社が出てくるのは必然です。
LCCが所有している航空機は世界で約3200機、発注残高が1000機と推定されています。そのうち発注残が最も多いのがアジアで半数を占めています。このことからエアアジアなど巨大なLCCがアジアで誕生する可能性も高くなっているのです。
ちなみに日本航空機開発協会によると、日本国内の保有機材は貨物専用機を含めて約600機となっています。LCCの増加により、大型機が年々減少し、対して中小型機が増えたことにより、世界全体での航空機の保有数は増加してきています。
アジア地域のLCCは今後どうなる?
2001年、アジアでのLCCシェアはたった1%でした。それが2010年には18%までシェアを広げました。コレは驚くべき数値です。
アジアでのLCCの歴史は欧州に比べて浅く、EUのように市場も統一されていなく、制限も多いです。そうした悪条件の中でもこれだけシェアを広げているのは驚異的です。更に東南アジアに限ってLCCのシェアを見てみるとかなり高い水準となっています。
たとえば、タイではタイ・エアアジアでは26.8%、ノックエアが26.4%です。LCCの比率では53%と欧州以上なっています。ベトナムではべトジェットエア、ジェットスターパシフィック航空がありLCCの比率は33.2%と欧州並みの数値です。マレーシアでもシェアの約半数、フィリピンでは半数以上がLCCシェアとなっています。
なぜこれほどシェアを伸ばしているのかというと不自由な二国間の制限を、合弁会社を設立したことで克服しているのです。エアアジア、ジェットスター、タイガーエアウェイズはアジア各国で合弁会社を設立し、積極的にブランドを展開しています。
ちなみに日本ではまだまだLCCのシェアは多いとはいえず、国内線全体の比率では10%程度ですが、国内線総座席で見ると世界3番目の規模になっています。
中国でも旅行客が増えていることや、インドではLCCシェアが60%を越えたことなど、今後もアジア市場でLCCはのびていくことを予感させるような状況が出来上がっています。
北米のLCCは今後どうなるのか?
アメリカのLCCは2001年に18%と悪くないシェア数だったのですが残念ながら2010年になっても約28%程度と、あまり伸びが大きくありません。シェアが拡大できていないわけではないのですが、欧州のLCCシェアやアジアのLCCシェアと比較すると伸び率はあまり伸びていないという印象になってしまいます。
なぜ、アメリカではLCC需要があまり高まらないのかというと30年以上前に規制緩和され航空市場が成熟してしまっているという土壌があります。LCCが参入できるようなニッチな市場がほとんど残っていないのです。
更にアメリカの大手航空会社は連邦破産法11条破産保護法(チャプター11)と呼ばれる法律を利用し、コスト削減を実現しLCCと大手航空会社の運賃の格差があまり大きくないことも理由の一つとなっています。価格の差があまり大きくないのであれば、わざわざサブ空港やサービスを簡素化した不便なLCCに乗りたいと思う人があまり出てこず、需要が拡大しにくいというのは明白です。
それでも順調にシェアを伸ばしているのがサウスウェスト航空です。アメリカ同時多発テロ事件で世界貿易センタービル・ツインタワーにテロが行われた後、しばらくは伸び悩んだ時期がありましたが、現在では持ち直し、順調に輸送旅客数を増やしています。
アメリカのように航空業界が成熟しきっている中では従来のLCCビジネスモデルでは太刀打ちできません。そこでビジネスモデルのハイブリッド化が進められており、今後はその転換でLCCの普及率が変っていくでしょう。
欧州のLCC状況はどうなっている?
欧州ではLCCが非常に盛んです。シェアの伸び率は非常に高く、EU域内で見ると40%となっています。ラインエア、イージージェット、エアベルリンなど歴史も長いLCCが沢山あり、ヨーロッパ国内の移動に大活躍しています。
なぜここまでLCCが普及したのかというと、欧州では航空が自由化されているからです。ヨーロッパは小さい国が密集しているため、国境を越えての航空市場はとても困難でした。しかしEUが航空自由化に踏み切ったことで、一部の公共サービス義務が指定されている路線を除いてEU域内の航空会社は自由に運賃を設定することができるのです。このことによりLCCの格安感が強調され、一気に普及したのです。大手航空会社も自由化に備えようとしたものの、失敗し自由化の波に乗り遅れました。こうした背景もあり、一気にLCC需要が高まったのです。
それでも欧州のLCCはサブ空港を主に使用していたため大手航空会社との直接対決はありませんでした。しかし近年ではLCC需要の高まりから、サブ空港を利用するLCCも増えてきており今後はますます大手航空会社の経営は厳しくなってくることは明らかです。
国際線では航空協定で保護されているため、まだまだ大手航空会社のシェアが大きいのですが今後LCCが国際線にも力を入れていくことから、このままLCC需要が高まれば経営が難しくなることは確実であり、顧客の激しい取り合いはますます進んでいくでしょう。