パイロット達の間で合言葉のように言われるのが、「晴れた日の富士山には近づくな!」という言葉です。
雨が降っている日、嵐の日に富士山に近づくなというのであれば、分かる気がします。
晴れている日なら気候も穏やかで、空を飛びやすいのでは?と考える方も多いでしょう。
それが富士山の恐ろしさなのです。
晴れた日の富士山の周囲には乱気流が発生しやすくなります。
乱気流に巻き込まれてしまうと、最悪の場合、巨大な飛行機がバラバラになってしまうこともあり、とても危険なのです。
■晴れた日の富士山が危険な理由
山岳の風下に発生する乱気流を「山岳波」と呼びます。
天気が悪い日であれば雨の向きや強さ、雲の動きなどで確認することができますが
雲ひとつなく晴れている時には肉眼で乱気流の発生を確認することはできません。
風の動きは目に見えないからです。
1966年、このことを知らないイギリスの旅客機が晴れた日の富士山付近を通り
期待が空中で分解して墜落するという事故が実際に起こっています。
それほど晴れている日の富士山は飛行機にとって、とても危険なエリアなのです。
■夏の入道雲もとても危険
もちろん、乱気流が発生するのは富士山付近だけではありません。
乱気流自体は地球上で毎日1万個以上発生しているといいます。
我々でも、遠くからでもひと目で乱気流だ!と分かるのが、入道雲です。
夏の青空、もこもこと高くそびえる入道雲は風物詩のようにイラストにも描かれます。
青い空に入道雲が浮かんでいるのを見ると、私達は「夏だなぁ」と感じることでしょう。
しかしこの美しい光景の裏側、雲の中は飛行機にとってとても危険なエリアです。
うっかりこの入道雲の中に入ってしまえば、飛行機は乱気流によって上下左右に激しく揺らされ
強力な閃光と音の雷が機体を遅い、更には雹や霰が激しく打ち付けます。
最悪の場合、飛行機はこの気流の変化に耐えきれず空中でバラバラに分解され墜落ということになるでしょう。
■乱気流に巻き込まれないために
万が一にもそんなことにならないようにするためには、入道雲を避けて突入しないのが一番です。
入道雲はわかりやすいので、避けることは難しくありません。
しかし、富士山の時のように、全ての乱気流が目に見えるわけではありません。
勿論管制室でも天候の状況は逐次チェックしていますし
飛行機自体にもレーダーで気流の動きをチェックしています。
このため、300kmも離れた場所からでも入道雲を発見し、避けることができるのです。